獣医学部の実態
獣医学部の実態

今回は、北海道は江別市にある「酪農学園大学獣医学部」で獣医を目指す学生たちの特集。
全国729校(平成20年8月8日時点)ある大学の中で、獣医学部・学科があるのは16大学。
ペットブームに対する獣医の少なさが深刻化する中、獣医を目指す彼らは、一体普段どのような実験や実習を行っているのだろうか。



酪農学園大学獣医学部 -獣医学部の夏目曜さんにお話を伺いました-

マウスやラット、モルモット、犬、馬、牛やニワトリなど様々な動物を育てたり、手術や実験をしたり。

動物が好きという反面、実際に実験を行う中で彼らはどのような心境に立たされるのであろうか。

獣医学の実態、またひとつのことを専門的に学ぶ大学/学部に通う学生の、熱意に迫る。

酪農学園大学

獣医になりたい、という夢を持った学生は一体いつ頃から獣医を目指したのだろうか。

酪農学園大学 多くの学生が、犬や猫を扱う小動物病院への就職を目指し入学するが・・・。

牛や馬などの「大動物」、犬や猫などの「小動物」、イグアナやフェレットなど特殊な動物「エキゾチックアニマル」という三つのタイプに分けられるそうだが、やはり小動物を扱う「小動物病院」が人気とのこと。
入学当初8割以上が動物病院への就職を目指すが、実際に獣医や臨床獣医師になり、動物病院に就職するのは3割程という。
残りの3割が、保健所や検疫所などで働く地方公務員、農林水産省や厚生労働省、環境省に入り国家公務員になるそう。
また、残りの4割が製薬会社、また特殊な例として動物園や水族館に就職したり、大学に残って教授を目指しつつ、研究を行ったりする。
実際には3割程しか獣医にならないという点は驚きである。
獣医の学部/学科を卒業し、獣医の道を選ぶ学生は年間およそ1,500人程だという。






どのような実験や、実習を行っているのか。


主にマウスやラット、モルモットを使った実験が多い。
この三種、同じようで何が違うのかというと、同じげっ歯種という種類に分類されるが、
マウス < ラット < モルモットという順に大きく体の動きも違うらしい。
大学のゼミがそれぞれ飼育し、常に繁殖させている。
犬や牛や馬などは、頻繁に実験に使うことはなく、また在学中に手術の練習をすることは少ない。
実務は大学病院などに行ってから経験するという。
獣医とはいえども、世の中五万といる動物すべての手術経験を積むことは難しく、応用性が問われる仕事だ。
犬や牛や馬などを大学でも育てており、大学は乳牛から乳を搾って作った、ミルクやソフトクリームを販売しているそう。
大学入学から3年生までは、ほとんど実験はなく、5年生や6年生になってようやく実習経験ができるらしい。
専門性の高い職業につくための下積み期間というものは、どの職業であれ長いものだと実感させられる。
また、大学付属の動物病院で亡くなった動物、実験などで使われた動物をともらう「慰霊祭」というものが毎年行われ、今年も11月22日に開催されるという。
お話を伺った夏目さんは、当会の幹事を務めている。


酪農学園大学 具体的には一体どのような実験が行われているのだろうか。

基本的な実験として位置づけられている、麻酔の練習などは、
実際に大学で飼育しているビーグル犬を使う。
麻酔が効きすぎると、死んでしまうこともあるそう。
やはり、育てることで愛着を持った動物を実験で使用することは、非常にプレッシャーがかかる。こういった授業や実験への「本気さ」は一般大学とはかなり差がある部分ではないだろうか。

実験で扱う動物は、健康な動物を扱う「健体解剖」と、病気になってしまった動物を扱う「病理解剖」の二つに大別される。
健体解剖では、乳が出なくなって老いてきてはいるものの、まだ元気な牛などを使用する。
病理解剖では、病気になってしまった犬が、なぜこの病気にかかり、なぜこのように元気がないのか、といったところを解明するために行う。
グロテスクな話にはなるが、死んだ犬を解剖することもあるそうだ。
血を抜いて、ホルマリン漬けした犬の皮をはぎ、背中の方にある胃や腸、腎臓、心臓、肝臓、脾臓などをそれぞれ取り出し実験を行ったり、筋肉を一枚一枚はがしたりと、
4週間をかけて1匹の犬を解剖するそう。
そういった実験の中で、クリプトという子牛の便から寄生虫に感染してしまう病気が流行ったりと、獣医学部独特の問題も存在する。



酪農学園大学
動物が好きだからこそ獣医学部に入った彼らが、実際に動物を扱う実験や実習を行うことへの抵抗をどう乗り越えたのか。
入学したての頃は、やはり多くの学生が抵抗を覚え、少数ではあるが血が苦手で学校を辞めてしまう人もいる。
しかし、何度も実験を行うことにより、“慣れ”も出てくるという。
ただ、そこに“慣れ”が生じてしまうことが、本当にいいことなのかという葛藤もあると、夏目さんは言う。
「本気で獣医となり、動物を救いたい」という想いがある彼らは、やはり誰よりも動物を愛しているのではないかと思わせられる。
世の中には様々な職業があるが、「命を扱う」という、いわば最も“心の強さ”を必要とする「医師」という職業につくためには、
こういった壁を超える力も必要とされているのかもしれない。


授業へのモチベーションの高さ。
獣医学部の学生はどのように、授業に取り組んでいるのだろうか。
話によれば、教授が見せたスライドを皆が一斉にデジカメで撮影するそう。
こういった光景は、なかなか一般の大学では見られないだろう。
スライドが変わるたびに、皆がデジカメを取るため、
席の前の方は、まるでアイドルの撮影会のような風景になるという。


獣医学部の学生が感じている社会への問題意識
獣医学部の学生は、社会に対して何か問題意識があったりするのだろうか。
夏目さんは、「獣医不足」と「ペットブームによって生まれている、飼い主の動物愛護精神の低下」
という二つの問題意識を挙げた。

獣医不足に関しては、現在話題になっている医者不足と同じような状況で、
特に地方での不足が顕著だという。
近くに動物病院が少なく、わざわざ上京していく飼い主も多いそう。
先程の通り、年間1,500人が獣医の卵として社会に出るということだが、
動物病院の募集人員はその2倍、3倍と言われており、
深刻な獣医不足は、ひとつの社会問題となってきている。
現在の不況の中で、一般的な大企業では採用予定人数を減らす傾向にある中、
医者や獣医の業界では、全く逆の流れが続いている。
こういったスペシャリストを生みだし、教育していくことに、
国や行政も力を入れているが、成果が出るのにタイムラグがあり、この問題が解決されるのはもう少し先になりそうだ。


ペットブームによって生まれている、飼い主の動物愛護精神の低下
獣医不足の流れに反比例するように、ペットブームの勢いは増す一方。
ペットブームが激しくなるにつれて、飼い主の動物愛護精神の低下も深刻化しているという。
飼ったペットを、飼い主都合で捨てたりすることが増えてきている。
近年では、ワニやイグアナなど、特殊な動物が捨てられ、保護され、後に保健所で処理されてしまうという事件が話題になることも多い。
もちろん、ワニなど特殊な場合はマスコミも取り上げられるが、
犬や猫が捨てられてしまうことが、日常茶飯事になってしまっていることにも、もっと目を向けるべきだと夏目さんは語る。

例えば、彼氏がサプライズで彼女に犬を誕生日プレゼントとして贈る、という場合に起きることが多いらしい。
彼女側が育てられる環境にいるかどうか分からない状況で、動物をプレゼントするということであれば、
こういった問題が起きることも十分にあり得る。

ペットショップで実際にヒアリングを行った夏目さんは、その現状を目の当たりにした。
突然女性が現れ「この犬うんちするから他のに変えてください」と言ったという。


笑ってしまうような話であるが、こういった問題は、獣医が増えることによって解決されるわけではなく、
飼い主はもとより、人それぞれがペットに対しての意識を変えない限りは解決されないのかもしれない。


今回、獣医学部に通う一般的にいえば特殊、スペシャリストの職業を目指す学生にフォーカスを当てたが、
取材をしていて特に感じたのは、
・時間が経つにつれて、就ける職業、得られるキャリアの幅は制限されていくということ。
・スペシャリストになる人は、とてつもない努力をしなくてはいけないということ。
上記の二点である。

子供だった頃は、スポーツ選手にでも、アーティストにでも、コックにでも、起業家でも、政治家でも、なんでも選択肢はあった。 しかし、中学、高校を卒業し、大学に入学し・・・
時間が経てば経つほど、自分の進める道は制限されていく。
大学時代の4年間、自分の将来を切り開こうと意識し、行動するのと、
そこまで深く考えずに、ただ単に就職をするのとでは、そこに大きな違いが存在する。

スペシャリストを目指すと、その道以外のことに費やせる時間は、やはり限られてくる。
獣医であれ、プロスポーツ選手であれ、
その道以外への道を断ってでも、その職業に就きたい、という“強い想い”が必須である。

学生は、もっともっと深く自分自身について「本当にこれでいいのか」と問いかけ、
行動すべきではないか、と強く考えさせるインタビューであった。


ご協力頂いた、酪農学園大学獣医学部のみなさん、夏目さん、ありがとうございました!


Text By:山川 雄志(GANBARUZINE!編集部)

トラックバック

トラックバック URL:
http://ganbaruzine.com/trackback/47

バックナンバー

学生時代の夢を追いかける

学生時代の夢を追いかける

梶井雄介
[2009.03.19]
Active Music Fes 09

Active Music Fes 09

イベント情報
[2009.02.25]
学生よ、地方を盛り上げろ!

学生よ、地方を盛り上げろ!

地方で長期インターンシップ!
[2009.02.19]
有名経営者出身大学ランキング

有名経営者出身大学ランキング

シリーズ第3段!!
[2009.02.12]
有名選手出身大学ランキング

有名選手出身大学ランキング

シリーズ第2弾!
[2009.01.29]
浅井裕美/ケアプロ

浅井裕美/ケアプロ

大学生からの夢を叶える!
[2009.01.21]
芸能人出身大学ランキング

芸能人出身大学ランキング

芸能人出身大学ランキング
[2009.01.14]
GANBARUZINE!大忘年会

GANBARUZINE!大忘年会

ガンバルジン!大忘年会
[2008.12.25]
飛び込み就活!?

飛び込み就活!?

就職氷河期を吹っ飛ばす
[2008.12.24]
SFF2008(後編)

SFF2008(後編)

学生フリーペーパー特集 後編
[2008.12.19]
PARTNER

PARTNER

優勝者インタビュー
[2008.12.19]
SFF2008(中編)

SFF2008(中編)

学生フリーペーパー特集 中編
[2008.12.17]
SFF2008(前編)

SFF2008(前編)

学生フリーペーパー特集 前編
[2008.12.09]
ガンバルジン! in ラグジュアリーパーティ

ガンバルジン! in ラグジュアリーパーティ

@銀座「砂漠の薔薇」
[2008.11.25]
獣医学部の実態

獣医学部の実態

「獣医になる」と決めた若者たち
[2008.11.19]
ビジネスに目覚める学生たち

ビジネスに目覚める学生たち

優勝者インタビュー
[2008.11.10]
東大生のノートは本当に美しいの?

東大生のノートは本当に美しいの?

検証してみました。
[2008.11.04]
ガンバルガールの体験取材!

ガンバルガールの体験取材!

セレブパーティに潜入!
[2008.10.28]
Lesson4 キラキラレッスン

Lesson4 キラキラレッスン

「まりこちゃん大変身!」編
[2008.10.21]
Lesson3 キラキラcookingレッスン

Lesson3 キラキラcookingレッスン

「おもてなし料理」編
[2008.10.14]
Lesson2 キラキラッピングレッスン

Lesson2 キラキラッピングレッスン

「loveをカタチにしよ!編」
[2008.10.08]
Lesson1 キラキラゴルフレッスン

Lesson1 キラキラゴルフレッスン

「ゴルフで社会デビュー編」
[2008.10.01]
中央大学

中央大学

多摩キャンパス編
[2008.09.08]
東京大学本郷キャンパス編

東京大学本郷キャンパス編

東京大学本郷キャンパス
[2008.08.28]
第一回:明治大学

第一回:明治大学

駿河台キャンパス編
[2008.08.15]

運営会社利用規約個人情報保護方針お問い合わせ